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「自分を責めないで。焦らず、ゆっくりと回復の山を一緒に歩みたい」ー摂食障害よりみち 代表・鈴木佳世さん




摂食障害の回復に携わる支援者の活動や「思い」に迫るインタビューシリーズ「回復の扉を、ひらく」第二弾!今回は、SNS相談や予防啓発活動を展開する「摂食障害 よりみち」代表の鈴木佳世さんにお話を聞きました


ー鈴木さんは、経験者でもありますが、ご経験についてまずは教えてください。

摂食障害を発症したのは、高校2年生の時です。振り返ると、小学生の頃から勉強や学級委員などに精を出し、子供ながらに「成果をあげて親から注目されよう」と頑張っている子どもでした。運動は苦手だったので、中学に入っても、勉強やボランティア活動を頑張っていました。当時学校でのいじめや親の不仲なども重なり、リストカット未遂をして親の不仲を解消しようとしたこともありました。


しかし、いじめをうけていることは親には話さず、一人で解消していました。その方法の一つとして、「いじめをしてくるような人たちに負けたくない、この人たちのいない学校に行こう」と自分を奮い立たせて、高校受験を頑張りました。しかし、高校では優秀な子が多く、これまでの成功体験が通用しなくなって挫折。自分の「武器がなくなった」ように感じ、自信がなくなっていきました。それまで自分の容姿は気にしていなかったのですが、当時付き合っていた人から見かけについて気になるコメントをされて、そこから服装を変えたり、ダイエットし始めたところ、周りの子たちに注目してもらい、自分が認められたような感覚に嬉しくなり、ダイエットにのめりこんでいきました。


食べることも、飲むことさえも怖くなり、体重も減り続けていきました。心配した養護教諭の先生の勧めで総合病院に行き、摂食障害という診断をうけました。病院では医師の理解を得られず、また、自分も病気だという自覚がなかったため、数回で通院は中断。拒食状態は高校3年の秋まで続きました。


高校3年の時に、母の入院がきっかけで、いつもと違うルーティーンになり、急に「何かがプツン」と切れて、そこから急に食べだして、過食に移行しました。しかし、食べ物や体重に対する執着は強く、拒食と過食を繰り返していました。私の場合は、過食嘔吐ではなく、非嘔吐過食だったため、高校3年生(18歳)からは下剤を乱用していました。また、摂食障害を発症してからは希死念慮も強く持ちつづけ実際リストカットもしていました。それから、17年以上摂食障害と付き合ってきました。


※鈴木さんのご経験の詳細は、こちらの摂食障害ホープジャパンの安田さんのポッドキャストの対談もご参照ください。


ー回復のターニングポイントや、役に立ったものなどを教えてください。

今振り返ると、私にとってのターニングポイントは、すべて「人」に関わるものだったと思います。回復を意識し始めたのは割と最近で、結婚した30歳過ぎの頃でした。ずっと見た目が大事と思い込んでいたのですが、体形と見た目以外の部分を見てくれる人に出会えたことが大きなターニングポイントではありました。


その他にも、大きく2つのターニングポイントといえる出会いがありました。まず1人目は、高校2年生の時に出会った養護教諭の先生です。本来であれば、保健室には、2時間くらいしか居させてもらえないのですが、その先生は一日中居させてくれて、私のとりとめのない食べ物の話やカロリーの話にずっと耳を傾けて付き合ってくれました。当時、親からも「おかしい子」と思われていて、理解してくれる友人もいなかったのですが、養護教諭の先生は、唯一意見もせずに私の話を聞いてくれました。今思うと私の居場所を作ってくれていたのだと思います。


また、もう一つのターニングポイントは、会社の同僚です。当時、親にもひた隠ししながら、下剤乱用を続けながら働いていました。ある時、社員旅行があったのですが、自分が薬を大量に飲んでいるのを女性の年上の同僚の方が見つけ、その方が本気で「あなた、そんなことしたら死ぬよ!」と怒りました。こんなに怒られたことがないくらいすごい怒り方で、すごく「心配されている」ということがかえって心に響き、自分の行動を振り返るターニングポイントになりました。


それまで自分は一人で回復したと思っていたのですが、今振り返ると、実は多くの人たちに助けられていたのだと実感しています。


ー現在活動されている「よりみち」について、団体の由来は?また、活動の目的や事業内容について教えてください。

「よりみち」の意味合いは2つあります。

よく当事者やご家族から、「〇月までに治したい」とか、「〇月までに〇キロにしたい」など相談を受けることがあります。ただ、回復を急いだとしても、また再発したりリバウンドして、かえって悪化してしまうこともあります。なので、「焦らずゆっくり寄り道しながら進んでいきましょう」という思いをこの団体名に込めています。また、摂食障害は「いつ誰が発症してもおかしくない病気」なので、この病気のことを「よりみぢか」に感じてほしいという意味合いも込めています。


活動自体は、私が自分の体験を打ち明け始めたことから始まりました。自分の体験が、今困っている人を助けるために生かせるのだと知って、それから一人で講座や講演活動などを始めました。徐々に活動の幅が広まり、一緒に活動をしたいと言ってくださる方々も出てきて、2019年に団体として設立しました。


現在は、当事者やご家族の回復支援サポート、そして摂食障害に対する偏見や誤解を是正していくための予防啓発活動を行っています。また、最近はSNS相談なども開始しています。「よりみち」だけが唯一の居場所ではないので、当事者やご家族には、居場所や相談先をたくさん見つけてほしいと思っています。その中のひとつに、「よりみち」があれば良いと思っているので、考え方や方向性が似ている他団体さんとは繋がり連携していければと思っています。




ーご自身が支援に関わる上で大切にしていることを教えてください。

摂食障害になったことを、当事者もご家族もとても責めていることが多いと感じています。なので、摂食障害になったことを「責める必要はない」ということを私はいつも伝えています。特にご両親やご家族が「自分たちが悪い」とか、「何もしてあげられない」とすごく責められているので、それは違うということは必ずお伝えしています。周りから理解してもらえない場合がほとんどなので、よりみちでは、その思いを受け止め、受容し、居場所のひとつになってもらえるよう接しています。


ー摂食障害は治る病気でしょうか?摂食障害が治る/回復するという状態はどのような状態だと思いますか?

治るという状態は、「日常生活が支障なく送れること」だと今は思っています。でも、私はもともと「治る」とは思ってなくて、一生付き合っていこうと諦めていました。なので、回復ではなく「寛解」という言葉を使っていました。


しかし、病院の先生や、国内外の専門家の方々と出会い、お話しする中で、回復の定義を聞いたり、実際に「回復するんだよ」ということを気づかされました。自分で団体を運営していたにも関わらず、心のどこかで(回復しない)と決めつけている部分があったんですよね。今は、摂食障害は「回復する」と思っていますし、私もその一人だと思っています。


ー最後に、現在回復のスタートラインに立たれている方々にメッセージをお願いします。

最中にいるときは、 終わりや出口がみえず、とても辛くしんどい中にいると思います。でも、いつかきっと「回復」する時があると私は信じていますし、実際私も回復した一人です。不安だったり、怖いとか、いろいろな思いがあると思いますが、自分のことを責めずに、ピアサポートや、理解してくれる人たちに助けを求めてほしいなと思います。


まるで一人で高い山を登っているかのように、しんどくてつらいと思うのですが、私はそんな方々と一緒に並んで歩いたり、前を進んだり、時には後から背中を押したり、そんな存在でいたいと思っています。みなさんの足の代わりにはなれないけれど、一緒に進むことはできるから。声を上げるのは勇気がいるかもしれないけど、一人じゃないことを忘れないでいてください。そして、一緒に山を登り切りましょう。

※インタビュー実施日:2025年4月16日


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Image by Jadon Johnson

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